舞う

いつもの春がきた
友人たちとお気に入りの紅茶屋さんに行くついでに、公園でサンドイッチを食べながらちらほらと咲いた桜をながめた
公園にも、桜にも、凸凹とした思い出があった

あの子が夜中に自転車でやってくる
あわてて、部屋の中を漫画みたいにぐるりと一周して
最低限の身支度をした
あの日から何年経ったのだろうか

きみの背中越しの桜は多分一生
これからの先の人生の中でも一層きれいで
ずっとずっと、この季節に思い出す

それでもこの結果は変わらない、これで良かったそう言えるように

 

それでは、よい春を

 

明け方

開幕から揺れたり燃えたりした2024

命を脅かされている人を見てただ祈ることはできず
仕事の対応に追われて悪態をつく

ひどい元旦だった

 

明けて本格的に仕事始めをして

いかに出来ない自分かということを改めて知らされて

ああ、もう

ここからいなくなりたい

そんな一月

でもここに書き記さなければ多分忘れてしまうくらいのことだった

ここに在る

ときおり訪れる理由のない不安と焦り
たしかに、家族を持った人にくらべて自分について考える時間が長いので
ひとりだから起こる不安なんだとは思う

だけど結局考えるにしろ考えないにしろ何も解決してないという意味では同じだ
ただ、あるってことに気付かなければ、ないのと一緒なんだ
そういう意味でひとりで居ることにはリスクがあるんだろう
たいがいの場合この不安は誰かとたっぷり一緒の時間を過ごした後に感じるんだ
自分がひとりだってことにはたと気づく月曜の朝などに

祖父母の死に際について、友人と話した
自分の体が母を同じ道をたどり始めていることについても話をした
逃れられない螺旋の道というやつについて

多分私たちは、どちらかがどちらかの死を見届けるんだろうから
だけど死なんて、人生のほんの一瞬のことでしかないじゃないか
今ここで、あなたと笑いあっている事はもう一生絶対になかったことにはならない
たとえ今日この世を去っても、ずっと変わらない事実だ

 

 

 

晴れ間

友達の話を聞いた

かつて一生一緒にいるって約束した相手のなれの果て
本来はそれも含めて引き受けると神様に約束した
だけどそれは、自分がボロボロになったときに相手もそうしてくれただろうと思えるなら、でいいと思うんだよ

多分その人は、あなたが何をしてもその地獄に落ちた
だからその人の行動を自分のせいだといってお風呂場で泣いたというあなたの話は全然違ってる
だから今別れをつきつけたらまたそこに落ちるかもと躊躇するのは全然違ってる
足を踏み出すなら今しかない。

 

 

戻ってくる

5月になって、あの日のことを初めて友達に話した

なんでか、なんとなく、自分の中だけの出来事としてとどめておきたかったことを口に出して

友達から改めて、選択を肯定されて

そうだよね、そうなんだよね、これで良かったのだよね、と。

 

あの時どんな選択をしても、着地点は”ここ”だったって気もしている

選んだから

隣に誰かいて欲しいときと
居て欲しくない時を比べた時に
後者の方が多かったからこうした。

私を見るひとのうち何人かは「もったいない」とか
「何か理由となる欠陥があるに違いない」とか言ったり
言わないまでも、そうなんだろうな、という顔をしていたり、する。

本当は何を選んでも完璧ではないけど、
完璧により近く見えるのは、家族をつくってワイワイと暮らすことだというのは重々分かっていた。
多分人生の痛みをごまかしやすいのもそういう選択だったと思う。

多分一般的には一番ギリギリのタイミングでその「チャンス」があった私は
現実的にそれを進める途中でぐるぐると目を回して息苦しくなって
これが欲しかったわけじゃない、と気づいてしまった。

いや、くれると言われたときはちゃんと嬉しかった。
でもそれは、現実にそうすることそのものよりは、
相手に「そうする気がある」と知るだけで足りていた。
それなのに、どんどんとその事項から逆算したスケジュールを立ててしまったのは
わたしにもウェディングハイみたいなものがあったからなんだろう。

だけどそれは私も相手もなんだか追い詰めてしまって、
多分本来は人生でそんなこと考えたこともなかった彼が
何かを考えたのか考えてなかったのか、
隣にいてもそっけなすぎる私をつなぐためだったか、
単に雰囲気に流されたか、
とにかく一緒に暮らして、結婚するなんて言ってしまったがゆえに結果的に私たちは別れた。

今でも結婚なんて言い出さなければジジイババアになるまで仲の良い恋人同士だったかもしれなかった。
しわくちゃでお互いの歯も毛も完全に抜けてしまうまで。

だけど結局は自分で選んだから。
あの日、大事なことを決めなきゃいけなかったあの日、
彼がそんなこと忘れて一人旅に出て行ってしまった日、
そして私もその日が彼の旅立ちの日だったって忘れていたあの日。
私たちはお互いのことに全然責任を持つ気がなくって、それぞれ別々の人間だったとまざまざと気づいてしまった。

だから、それで。